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教室について

教授あいさつ

MESSAGE

病理学における
難治性疾患の
理解・克服

教授 石川 文彦

FUMIHIKO
ISHIKAWA

この度、2023年8月1日付にて、医歯学総合研究科 包括病理学講座教授を拝命致しました。

1997年(平成9)に九州大学医学部を卒業し、同大・病態修復内科学講座(旧 第一内科学講座)に入局、九州大学病院での臨床研修を経て、3年半のサウスカロライナ医科大学留学、九州大学・特任助教などの機会をいただきました。2006年、理化学研究所にてPrincipal Invesigatorとして研究室をスタートし、白血病の理解と克服、造血幹細胞から免疫細胞の分化、免疫細胞や低分子化合物を用いた白血病治療開発など研究を進めて参りました。物理・化学・工学など幅広い自然科学を研究する場所にて、分野を超えて同じ目標に向かう姿勢、サイエンスの今・将来を語り合う大切さを学ばせていただきました。

これまで病理学とそのコミュニティーとの関わりが少ない中で、東京医科歯科大学の包括病理学講座の担当として責任を担いますが、自らの全力を尽くし、教室や関連病院、学会や同門の先生方、技術・検査の専門家らと共に、病理学がさらに輝く時代を築き、患者様を守る臨床的病理活動、病理学を目指す若い方々の教育、そして研究に貢献する所存です。先代の北川昌伸教授が、病理学会理事長として若手に宛てたメッセージの中に「病理学は、ヒトの様々な病気に対して、基礎・臨床両側面から研究し、予防・治療に繋がることを目指す」とあります。当教室にて、北川先生が提唱された病理学の理念を、引き続き大切にして参ります。

臨床研修を終えて研究の世界に入る際、正常・疾患いずれにおいても、体の奥深くで何が起きているかを可視化することから理解は深まると考え、「Humanized Mice:ヒト化マウス」を開発しました。組織の構築・細胞の局在を確認し、疾患に重要と信ずる分子の発現を突き止める、病理学的な考えと重なるように感じます。可視化が実現すると、遺伝子、タンパクの関わり合いを頭に浮かべながら、血液以外の領域の研究者らと共に考え、研究を推進する機会に恵まれました。

着任後、まだ短い時間しか経過していませんが、病理医は、ベッドサイドに立たないながらに患者さんを想い、正確な病理診断に力を注ぐ、診断の過程で浮かんだアイディアを、将来の先進治療へと展開する気概を持っていると分かりました。そんな気概や情熱を持って夢を叶えるためには、何が必要なのでしょう。病理の世界にいるものこそが担うべきことがある一方、疾患にアプローチして患者さん達を助けるという目標に、学問・分野の垣根はなく、かえって、分野を超えてこそ初めて理解できること、異なる文化・考え方を含めてこそ理解できることもあるのでしょう。Genderやnationality、専門分野、MD or PhD、様々な角度から、diversityを広義に捉えて大切にし合い、難治性疾患の理解と克服を目指すために意気投合できると信じます。

数万に及ぶ分子について網羅性を含めて計測・探索し、定量性・正確性を期して数万から一つ又は数個の標的を見出す、病理と治療を繋ぐことが実現可能な時代となりつつあります。ゲノム・機械学習・エンジニアリングなど、病理学の領域を超えて疾患に迫る意義と、医師や研究者が心の奥底から目指すものが何か、今一度、病理医も、理学や工学の研究者も、産業界をリードする方々も、共に考える時期に差し掛かっているのでしょう。共同研究を含めた「チーム」が結束して疾患を倒す。チームの絆を強固にする過程で、「個」の優れた力を活かす。視線を世界に向けながら学び、グローバルに交流し、国際感覚とdiversityを身につける。これらが、今、明かされていない疾患の本質を見極め、理解から克服を目指す病理学の新しい時代を築くことができる鍵と感じますし、そのような考えのもと、教室を含めた共同チームを形成したいと決意します。

「今の医療で最善を尽くしても助けられない患者さん達がいることは確か。そんな患者さん達を助ける研究を実践できるか?」谷口修一先生(浜の町病院長)から、2006年にかけていただいた言葉です。仲間と共に「ベッドから離れた場所でも、患者さんの命に接し、先進の治療を拓く:助ける病理学」を目指したいと思います。容易ではなくとも、病める人たちを助ける気概を持つ若い方々の参加、分野に関係なく、心からお待ち致します。

関係の皆様、ご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

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